勝訴判決の報道とその歴史的意味

後藤徹監禁事件の資料(32)

暗鬱な気分

 後藤勝訴判決後、後藤さんは東京地裁内の司法記者クラブ室で記者会見を行なった。

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 統一教会の長い歴史の中でも記者クラブでの会見は初めてのことである。
 統一教会員が主体性を発揮したという意味では画期的だと思う。

 私もクラブの許可を得て、記者席に座った。
 会見では、代理人の福本修也弁護士、後藤徹さん、鴨野守教団広報局長の順で話したが、それを聞きながら、記事にするメディアはないだろうな、とやや暗鬱な気分でいた。

 話は遡る。1997年のことである。
 統一教会の鳥取教会内で信者の富澤裕子さんが母親と話し合いをもっていたところを、父親と親族、それに父親が雇った興信所の職員の約20人が武器をもって襲撃し、富澤さんを拉致する事件が起きた。教会の建物、備品は壊され、教会職員は負傷した。
 前代未聞の驚愕すべき事件であった。

【参考記事】拙著『我らの不快な隣人』(179頁~)、宗教ジャーナリストの室生忠氏の「破壊される信仰」

 しかし、この事件を報じたメディアは一社もなかった。
  また、富澤さんは神戸真教会の高澤守牧師(例の買春牧師)らを刑事告訴するとともに民事裁判を提起した。裁判では一審、二審ともに一部勝訴した。だが、このときもやはり報じられることはなかった。

 こうした経緯があったため、後藤さんの勝訴判決を報じる新聞社はないだろうと思ったのである。記事にならなければ、内輪で勝った勝ったと喜んでも、信者の家族はもとより世間に知られることはない。実際、富澤勝訴判決のことは、当の教会員ですら知らない人が多いはず。だから、暗鬱な気分になったのである。

 また、これはあとで知ったことだが、被告側は後藤さんの前に記者会見を行なっていた。被告代理人の山口広氏と懇意にしている記者は少なくない。
 もし、この会見を事前に知っていたら、<勝訴判決は報じられない>という予感は確信に変わっていたであろう。

 しかし、メディアはベタ記事であろうが、報じたのである。これまでのメディアの姿勢からすれば画期的なことである。

 以下にそれを紹介する。

勝訴判決を報じた新聞記事

 記事は、いずれも紙媒体から引用したもの。末尾に印で間違いを指摘しておいた。

朝日新聞
統一教会信徒、親族に勝訴 損害賠償訴訟
 世界基督教統一神霊協会(統一教会)の男性信徒が親族らを相手に「拉致監禁され、信仰を捨てるよう強要された」として計約2億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。相沢哲裁判長は「親族らは長期間、男性の自由を大きく制約した」と認定し、計約480万円の支払いを命じた。判決によると、男性は統一教会の施設から、1995年9月に東京都内の実家にいったん帰省。その後2008年2月まで、親族らが東京・荻窪のマンションなどに引き留めて一緒に生活し、カウンセラーが男性に脱会を勧めるなどした。

判決文には、宮村氏のことをカウンセラーと記載していない。たんに「被告宮村」である。自分の価値観をクライアントに強要することが禁じられているカウンセラーという表現を宮村の呼称に使うのは全くもって誤りである。あえてつけるとしたら、「株式会社タップ社長」だろう。なお、このあとに紹介する東京スポーツ新聞では「脱会説得の専門家」と表現している。

 産経新聞
「統一教会脱会して」と10年間“監禁”…信者親族に異例の賠償命令
 統一教会から脱会するよう親族に説得されていた信者の男性が「マンションの一室に約10年間閉じ込められた」と、親族側に約2億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で東京地裁は28日、約480万円の支払いを命じた。親族側の代理人弁護士によると、脱会を勧めた側への賠償命令は異例だという。
 判決によると、男性は平成9年12月から、東京都杉並区のマンションで親族から説得を受けた。親族が常時在宅して自由に外出できず、統一教会関係者と連絡を取れなかった。男性は説得に応じず、20年2月、親族からマンションを出るよう言われた。
 相沢哲裁判長は判決理由で「男性を心配していたことを踏まえても、社会通念上の限度を逸脱している」と述べた。

「マンションの一室に約10年間閉じ込められた」。これは後藤さんの訴えなのか、裁判所が認定したものなのか、どちらとも取れる書き方になっているが、事実は後者である。

東京スポーツ
脱会強要し12年5カ月監禁
統一教会 勝訴判決の今後
 
 世界基督教統一神霊協会(以下、統一教会)の信者で全国拉致監禁・強制改宗被害者の会代表の後藤徹氏(50)が12年5か月間にわたって監禁され、棄教を強要されたとして総額2億161万8527円の損害賠償を求めた民事訴訟で、東京地裁(相沢哲裁判長)は28日、後藤氏の親族ら被告に対し、483万9110円の支払いを命じる判決を下した。統一教会側の勝訴となった。
 後藤氏は大学4年時の1986年、統一教会に入会。ところが、それに反対する両親、兄夫婦、妹が脱会説得の専門家である宮村峻氏とともに後藤氏を監禁し、脱会を強要した。後藤氏は12年5か月もの間、外出の自由を奪われただけではなく、信教の自由を侵され、2001年、兄夫婦、妹、宮村氏らを相手に訴訟を起こした。事情を知る関係者の話。
「ここは信教の自由や基本的人権が認められた法治国家のはず。いくらなんでも脱会させるために約12年もの間、監禁していいはずがない。後藤さんは栄養失調や、廃用性筋萎縮(筋肉を長期間使わず萎縮が起こること)などの傷害を受け、入院するまでになった」
 統一教会といえば、さまざまな問題を報じられているため、世間のイメージが悪い。それゆえに脱会のためには、何をやっても許されるという風潮があるのは確かだ。また、宗教や家族の絡む問題に警察の動きも鈍く、なかなか被害の実態がわかりにくい。後藤氏のケースでも当初刑事告訴したが、不起訴処分となり、民事に切り替えた経緯がある。
 原告側の福本修也弁護士は「拉致や監禁の責任を認める司法判断はこれまでなかった。そういう意味では、大きな一歩です」と一定の評価を与えた。「おびえなくても信仰を持つことのできる日本になってほしい」と訴えた後藤氏。判決内容にはまだ不服な点があるとして、陣営は控訴するつもりだという。

訴訟を提起した年を「2001年」としているが、これは誤り。正しくは2010年である。また、「後藤氏のケースでも当初刑事告訴したが、不起訴処分となり、民事に切り替えた経緯がある」も間違いである。民事事件として訴えること(損害賠償を求める)と、刑事事件として訴えること(刑事罰を求める)とは別次元のことであり、後藤さんは初めから告訴のあと提訴する予定だった。
 また、記事の間違いではないが、福本弁護士のコメントは記憶違いによるものである。前述したように、富澤さんの事件では高澤牧師らの不法行為を認定している。前掲の室生氏のサイトを読んでいただきたい。

世界日報
不当拘束、棄教強要を認定/宮村氏や兄らに賠償命令
12年余の監禁訴訟で後藤徹氏勝訴―東京地裁
 新潟市や東京・荻窪などに約12年5カ月にわたって拉致監禁され、信仰する宗教団体からの脱会を強要されたとして、世界基督教統一神霊協会の信徒である後藤徹氏が、宮村峻氏や新津福音キリスト教会の松永堡智牧師、後藤氏の兄や妹らに約2億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日午後、東京地裁であった。相澤哲裁判長は後藤氏の家族らに対して483万9110円の支払いを命令。このうち96万7822円は、宮村氏と連帯して支払うよう命じた。松永氏と日本同盟基督教団に対する請求は棄却した。

 東京地裁は「(兄らは)玄関のドアの内側のドアチェーンの部分に南京錠で施錠をしており、当該南京錠を解錠しなければ上記ドアを開けることができない状態にしていたほか、ベランダに面した部屋の窓についても、鍵の付いた錠を設置し、開閉ができない状態にしていた」と認定。「各滞在場所における逃走防止措置の実施、外出及び外部との連絡の制限等に重点が置かれたものであって、その全体を通じ、原告にとって、その意に反する強制的な要素を含むものであったことは明らか」と強調した。
 また、宮村氏については「信者の家族らに対し、脱会説得の実践的・実効的な方法を指導していた」上に、「原告が荻窪フラワーホームにおいて不当に心身を拘束されていることを認識しつつ、平成10年1月頃から同年9月頃まで、頻繁に元信者らを連れて原告の元を訪れ、脱会を強要した」として、同期間は家族らの不法行為に加担したと認めた。

 相澤裁判長は「(兄らの)不法行為により、10年以上もの長期間にわたり、その明示の意思に反してその行動の自由が大幅に制約され、外部との接触が許されない環境下に置かれ、その心身を不当に拘束され、棄教を強要されたものであり、そのことにより原告が被った精神的苦痛は極めて大きい」と断じた。

 後藤氏は判決後、東京地裁前に集まった支援者らを前に「勝訴しました。(支援に)心から感謝いたします」と報告した。

裁判長の名前を「相沢」ではなく、「相澤」と正しく表記していたのは世界日報だけである。
 

ワシントンタイムズ(ネットニュース)
日本人男性は、宗教的な弾圧に画期的な訴訟に勝利
A Japanese man who had been kidnapped by family members and subjected to violent attempts to renounce his religion has won a court ruling against his captors, an outcome religious freedom advocates applaud while saying more needs to done to stop religious oppression in Japan.
Toru Goto, a member of the Unification Church, this week was awarded the equivalent of $47,000 by a Tokyo District Court.
“My heartfelt wish is that this will be of help in eradicating kidnapping and confinement,” Mr. Goto, 50, said during a news conference in Tokyo. “With the opportunity provided by this victory, I hope that Japan, which guarantees freedom and human rights, can at least become a country where people do not have to fear daily being kidnapped and confined because of their faith.”
A spokesman for the Unification Church said Thursday that the verdict is welcome news. Michael Balcomb, president of the Family Federation for World Peace and Unification in the United States, said it “brings the Unification Church in Japan one step closer to closing the sad chapter on forced conversions.”
Religion in Japan is strongly represented by Shintoism and Buddhism, though newer religions such as the Unification Church and the Jehovah’s Witnesses are gaining popularity.
Last year, the U.S. Committee on International Religious Freedom cited Japan’s judicial system for turning a blind eye to the kidnapping and forced deprogramming of people in the Unification Church and other “new religious movements” over the past several decades.
“In some extreme cases, as with Unification Church member Toro [sic] Goto, individuals were confined against their will for a decade or more,” the committee said in its 2013 report. “Those abducted describe psychological harassment and physical abuse by both family members and ‘professional deprogrammers.’ Police and judicial authorities have neither investigated nor indicted those responsible for these acts, often citing lack of evidence.”
Scott Flipse, the committee’s deputy director of policy, expressed pleasure Thursday with outcome of the Goto case, saying the panel hopes “his judgment sends the signal that forced renunciations of faith cannot continue with impunity.”
The Japanese Embassy and the State Department did not respond to requests for comment. However, the State Department cited Japan for inaction in religious oppression cases such as Mr. Goto’s in its 2010 International Religious Freedom Report.
The Washington Times was founded by the Unification Church in 1982, and now operates independently of the Church.
Mr. Goto filed a lawsuit against his brother, sister and sister-in-law, as well as professional deprogrammer Takashi Miyamur, and Yasutomo Matsunaga, a Christian minister. All but Mr. Matsunaga were found liable.
Dan Fefferman, president of the International Coalition for Religious Freedom, said the ruling is important because “the top deprogrammer in Japan was held culpable in a court of law. That’s important because makes it difficult for him to operate.”
“It’s a very important case because it’s very rare for a court to find in favor of victims of deprogramming in Japan,” he added.
Freedom Rights Project co-founder Aaron Rhodes, called the court’s $47,000 reward “paltry,” but said it was an important first step.
“Finally the Japanese judicial system is waking up to religious discrimination and a bit more ready to act despite taboos that have no place in a democracy.”
© Copyright 2014 The Washington Times, LLC. Click here for reprint permission.

Read more: http://www.washingtontimes.com/news/2014/jan/31/man-wins-landmark-lawsuit-on-religious-oppression/#ixzz2s7urqpdN
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(注)機械訳はあまりにもひどく、原文を載せました。誰か日本語に訳してくれたら、それと入れ換えます。URLはhttp://www.washingtontimes.com/news/2014/jan/31/man-wins-landmark-lawsuit-on-religious-oppression/

追加(2月3日)・暗在翔子さんから訳文が送られてきました。それを貼り付けておきます。暗在さん、ありがとうございました。

日本人男性が 宗教弾圧に関する画期的な訴訟に勝利  2014年1月31日(金)

 家族によって拉致され、宗教を放棄するよう暴力的な試みにさらされた日本人男性が、実行者に対する司法判決を勝ち取った。信教の自由の支持者たちは、日本の宗教の虐待を止めるためにはもっと多くがなされる必要があるとしながらも、結果に喜びの意を表明した。

 統一教会のメンバーである後藤徹は、今週、東京地裁によって47,000ドルの賠償額を認められた。

 後藤氏(50)は、東京での記者会見で、
「私の心からの願いは、今回のことで拉致監禁の根絶が進むことです」と語った。

「この勝訴をきっかけにして、自由と人権を保証している日本が、少なくとも自分の信仰が理由で拉致・監禁されるのではないかと、人々が心配する必要のない国になることができるよう望みます」

 木曜日、統一教会のスポークスマンは、判決は喜ばしいニュースであると語った。
 アメリカの世界平和統一家庭連合会長のマイケル・バルコムは、それは「日本の統一教会において、一連の悲しい強制改宗の終結へと近づく一歩です」と語った。

 統一教会やエホバの証人のような新宗教が人気を得てはいるものの、日本の宗教は主に神道と仏教だとされている。

 国際的信教の自由 米国委員会は昨年、過去数十年間にわたる統一教会や他の「新しい宗教運動」の信者への拉致と強制的改宗を見て見ぬ振りをする理由として、日本の司法制度を挙げた。

「いくつかの極端な事例では、統一教会員の後藤とおろ(原文ママ)の場合のように、個人の意思に反して10年以上も監禁された」と、2013年委員会報告書に書かれている。
「拉致された人たちは、家族と『専門のディプログラマー』の両方による心理的ハラスメントと肉体的虐待について述べている。
 警察と司法当局は、しばしば証拠不十分を挙げて、これらの行為に責任を負うべき人々に対して調査も起訴もしてこなかった」

 委員会の スコット・フリプセ政策次長は、木曜日に後藤事件の結果に喜びを表明し、委員団は「彼の判決が、信仰の放棄を強要すれば罰を免れ続けることはできないとの合図を送ることになる」だろうと述べた。

 日本大使館と国務省はコメントの要請に応えなかった。
しかし、国務省は2010年の国際的信教の自由報告書の中で、後藤氏のような宗教の虐待事件に無活動だと日本を引き合いに出している。

 ワシントンタイムズは1982年に統一教会によって設立され、現在は教会と無関係に操業されている。
 後藤氏は、専門のディプログラマー宮村峻およびキリスト教牧師松永堡智に対してと同様に、自身の兄、妹および義理の姉に対する訴訟を起こした。松永氏以外の全員が罪を負うべきとの評決が下された。

 国際宗教自由連合の議長 ダン・フィファマンは、
「日本のディプログラマーのトップが法廷において有責となり、彼が活動しにくくなる」故に、この判決は重要であると述べた。

 彼は「法廷が、信仰を捨てさせられた犠牲者を支持する判決を下すのは非常にまれなので、これはとても重要な事例だ」と付け加えた。

 自由権利プロジェクトの共同創立者アーロン・ロードスは、裁判所の47,000ドルの賠償額は「少な過ぎる」と非難するが、それは重要な第一歩であると語った。

「ようやく日本の司法制度は、宗教差別に目覚めつつあり、少しずつ民主政体においてありえないタブーの害悪に判決を下す準備が整っている」

メレディス・サマーズ
c著作権2014、ワシントンタイムズ、LLC。(以上)
 
 れらの日本の記事で注目すべきは、後藤会見の前に行われた被告側の記者会見での主張を、「なお、被告は判決を不服として控訴する予定」といった短文を含め、一切報じていないことである。説得力がないと判断したと思われる。

 なお、統一教会広報調べによると、共同通信の配信記事を茨城新聞神戸新聞信濃毎日新聞上毛新聞などが掲載したという(記事は産経新聞とほぼ同じ)。
 監禁説得の指導者や全国弁連の山口広弁護士たちが色をなしている姿が想像できよう。

原告側の主体は原告

 最後に記者会見の2つの写真を見ての感想を述べておく。
 
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左の写真=左から福本・後藤・鴨野。
右の写真=左から後藤兄・中村周而弁護士(松永牧師の代理人)・山口貴士弁護士(後藤兄らの代理人)・山口広弁護士(宮村氏の代理人)・宮村峻タップ社長。
※被告側にはたくさんの記者が集まったように見えるが、右半分は支援者である。その根拠の説明は長文になるので省略する。

 原告側は真ん中に提訴した後藤さん。被告側は山口貴士弁護士、その両隣も弁護士、提訴され受けて立った被告は両端に座っている。もし、判決は不当だと真に怒っていたのなら、真ん中には代理人ではなく被告が座ってしかるべきだ。
 ここに後藤裁判の内実がある。

 被告&被告代理人たちは、こんな主張をしていた。
 後藤が提訴したのは、統一教会の拉致監禁(反対)キャンペーンの一環であり、後藤自らの意思で提訴したのではない。言い方を換えれば、後藤は統一教会からマインドコントロールされて裁判を起こしたのだ、と。
 しかしながら、後藤さんは自ら記者クラブに会見を申し入れ、堂々と真ん中に座った。前述したように、会見では福本、後藤、鴨野の順で話したが、一際大きな声で発言したのは後藤さんだった。

 後藤兄・兄嫁・妹・宮村は、証人尋問では「家族の話し合いだった」「徹は家族を伝道するために、マンションから出て行こうとしなかった」「引きこもり状態だった」と証言していたのに、判決では一切認められなかった。
(判決についてはYoshiさんの「後藤裁判判決の意義 – 宮村峻の責任を認めた画期的判決」がもっともわかりやすい)
 彼らにとっては不当判決。そのことを主張する記者会見場では後藤さんのように堂々と真ん中に座るべきなのに、被告代理人が真ん中で、裁判の主人公たち端っこなのである。

 推測するに、こういうベクトルだったと思う。
 後藤さんから提訴され、被告らは慌てた。刑事事件と違って、民事は訴えの申し出があれば、訴状の体をなしていないといったよほどのことがない限り、裁判が開かれるからだ。また刑事の場合、検察が起訴相当、不起訴相当を判断するのは密室で行われる。検察審査会もそうだ。これに対し、裁判は公開である。

 被告らは、1995年9月から2008年2月まで、後藤徹を3つのマンションに閉じ込めていたことは認識している。
 これを裁判でどう釈明すればいいのか!?

被告側の主体は代理人

 山口広弁護士らにすがるしかなかった。
 緊急避難で監禁した(京大カープの吉村さんの訴えに対し)、自力で救済するしかなかった(エホバの監禁被害者の訴えに対し)と監禁派の代理人は弁明したが、いずれも通用しなかった。
 そこで、山口氏が取った手法は、法律論ではなく、事実論つまり監禁虚構説であった。
 今利理絵さん、アントール美津子さんの提訴で、この監禁虚構説つまり監禁ではなく「親子の話し合い」だったという主張をして、勝った。
 法理論では勝てないから、嘘偽りを展開する(ブラックライターと同じ)。これが山口氏ら弁護士たちにとって勝利の方程式となった。当然、後藤裁判でも監禁虚構説を唱えることに。
 
 2つばかり横道にそれた話をしておく。
その1・山口氏が私に「アントール美津子の裁判に勝ったよ」と嬉しそうに語ったことがある。すかさず、「法律論で勝ったの、それとも事実認定で」と質問すると、さも意外だった風に「それが事実認定で勝ったんだよ!」。このときの山口氏の喜びと意外感が入り混じった表情が今でも忘れられない。山口氏はどこで私に話したかも忘れただろうが(苦笑)。

その2
・監禁虚構説を今利裁判、美津子裁判で述べていた頃、後藤さんは監禁されていた。その事実を山口弁護士は知っていたはずだ。
 山口氏と袂を分かち、後藤裁判に協力してくれた、宮村氏が蛇蝎の如く嫌う伊藤芳朗弁護士は噂として後藤さんの監禁を聞いていたし、子どもの保護説得に成功した信者家族でさえ知っていた。宮村氏と仲良しの山口弁護士が知らないはずはない。
 まっとうな弁護士であれば、またふつうの人間性の持ち主だったら、宮村氏に監禁はやめるように忠告すべきであった。「裁判に訴えられる可能性があるぞ」。2人の間にどういうやりとりがあったのかはわからないが、2人の提訴を受けて、後藤さんの監禁をストップしていたのなら、監禁は12年間ではなく4年間で終わっていた。そうしていたのなら、後藤兄弟姉妹が対立することはなかったかもしれないし、後藤兄夫婦、また妹も子どもを授かっていたかもしれない。山口広弁護士は許されざる弁護士だと思う。

 話を戻す。
 被告・後藤兄らは保護(監禁)したと思っていたのに、保護ではなく、親子の話し合いだったと主張する。この弁護方針に戸惑ったと思うが、勝つためにはしかたがない。ただ、12年も親子の話し合いを続けていたというのは、一般常識でも裁判所でも通用しない。そこで「徹は家族を伝道するためにマンションに居座り続けた」とか「出ようと思えば出れたのにそうしなかった」と四の五の補強した。
 以上の私の推測が事実なら、親子の話し合いだったと主張する主体は、被告ではなく、被告代理人である。それゆえ、記者会見では被告代理人が真ん中に座ったのである。

 席順だけでそんなことが言えるのかと思われる読者は少なくないと思われるが、職場の席順を思い浮かべてもらいたい。上司の席は端っこにはない。端っこは平社員だ。今後、他の裁判関係の記者会見での席順に注視してください。(席の位置を論じた記事があったはずだが、見つからず)

 真ん中に往年の闘士、山口広弁護士ではなく、山口貴士弁護士が座ったことも興味深い。
 深読みかもしれないが、還暦を超えた広弁護士はそろそろ統一とは関係のない法律活動をしたい(懲戒処分を受けてもおかしくないようなあこぎなことをやってきたのだから、その気分はよくわかる)、一方の貴士弁護士はカルト問題で名を馳せ、親分の紀藤弁護士より有名な弁護士になって、スポットライトを浴びたい。そうした2人の気分が反映されたものではなかったのか。
 そういえば、後藤裁判でも広弁護士は目立った存在ではなかった。今利裁判のときは、被告代理人の紀藤正樹弁護士が山口広弁護士の顔色をうかがっていたのが傍聴席からはっきり見て取れるほどだったが、それが後藤裁判、記者会見では・・・。

明日の日曜礼拝

 ところで、今回の勝訴判決と報道が全国の統一教会員に知れ渡るかどうかを杞憂している。まず、教会員の圧倒的多くは一般紙を購読していない。世界日報を読んでいる人もごく少数だ。
 教会のサイトには勝訴判決の記事が掲載されている。しかしながら、ネット情報にアクセスする教会員は多めに見積もっても全体の5%以下だ。パソコンを購入したものの、1000円前後のプロバイダーの料金が払えず、床の間に飾っている教会員もいるという。その結果、いまだにアメリカ統一の会長は仁進氏だと思っている教会員もいるとか(泣。

 このままなら、教会員の圧倒的多数は、保護説得が不法行為と日本国家から認定されたことを知らずに終わってしまう。
 焦点は明日の日曜礼拝(2月2日)だ。教会長さんが新聞記事のコピーでも配りながら、勝訴判決を報告するかどうか。相変わらず、つまらない退屈な説教で終わるような教会長さんだったら、たんなる給料(献金)泥棒、やめてもらったほうがいい。
  教会員読者からの日曜礼拝の報告を期待したい。個人メールでもいいですよ。

-勝訴判決を報じたブログ紹介-

「ブログ村-統一教会」に登録しているブログは省略する。でも一言。かなりのブロガーが取り上げているが、信じられないことに能登教会の若狭力氏を筆頭に沈黙しているブロガーが多数いる。<文顯進・命>のパシセラさんでさえ報じているというのに。小言終わり。

(1)前出、室生さんのブログ「12年間の監禁・強制棄教訴訟で原告・後藤徹さん勝訴」
(2)奈々草さんのブログ「後藤徹氏裁判勝訴」
(3)荒井俊介さんの「『保護説得』は違法!の判決」
(4)「拉致監禁をなくす会」の「後藤徹氏勝訴!! 宮村峻らに対して損害賠償判決」

(追記)立場違えば、表現が微妙に異なる。面白いし勉強になります。取り上げたブログはまだあると思います。見つけたら、教えてください。

(お知らせ)裁判ブログで判決文の紹介が始まっています。超長文ですが写真もたくさんあって読みやすいですよ。「後藤徹氏裁判判決文①」

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